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第15話  

スポーツカーの目処がつくと、森岡翔は江南インターナショナルマンションに戻った。

 新しく買ったノートパソコンを開き、クジラライブをダウンロードした。小さなマッチ棒というアカウント名で登録した。森岡翔は以前、クジラライブを見たことがなかった。パソコンを買うお金がなかったからだ。

 クジラライブは、パソコン向けでは最大手のライブ配信プラットフォームであり、ティックトックはスマホ向けでは最大手のライブ配信プラットフォームであった。この2社で、それぞれの市場の8割を占めていた。

 従妹の山下美咲のライブ配信ルームIDを入力すると、すでに夜の11時近くになっているが、美咲はノリノリで配信をしていた。

 ライブ配信ルームに入ったとき、美咲はギフトを贈ってくれた視聴者たちに感謝の言葉を述べていた。しかし、どれも数百円程度の少額のギフトばかりだった。森岡翔はランキングを見てみた。1位は20万ちょっと、2位は数万円程度まで落ちていた。

 ゴールデンウィークに美咲に会った時、ちょっと注意してやらないとな。兄貴は今や億万長者なのに、こんな安っぽい感謝の仕方じゃダメだろう。他のやつらに知られたら、俺の顔が立たない。

 アカウントに2億をチャージし、森岡翔は美咲にギフトを贈る準備をした。本当は数億くらい贈ろうかと思ったが、美咲が驚いてしまうといけないので、やめておいた。

 ゴールデンウィークに湖城に行ってから、美咲に十分なお金を渡して、叔母にも事情を説明してもらおう。そうすれば、俺が何か悪いことをして大金持ちになった、なんて誤解されることもないだろう。

 「山下さん、ギフトありがとうございます!」

 「キララさん、ギフトありがとうございます!」

 「先輩、スーパーカーのギフト、ありがとうございます!ありがとうございます!」

 しばらく見ていると、先輩という人が美咲にスーパーカーのギフトを贈った。スーパーカーのギフトは、一つ4000円もする。先輩というのが、ランキング1位の人物だ。

 森岡翔はコメントを投稿した。

 「お嬢ちゃん、お兄ちゃんって呼んでごらん。ランキング1位にしてあげるよ!」

 湖城。

 雲湖大学の寮。

 山下美咲は、ライブ配信でギフトを贈ってくれた視聴者たちに感謝の言葉を伝えていた。

 そんな中、一つのコメントが彼女の目に留まった。

 美咲はためらうことなく、こう言った。

 「小さなマッチ棒さん、ランキング1位にしてくれるって本当ですか?」

 「もちろんだよ!!!」森岡翔は続けてコメントを投稿した。

 「ありがとうございます!マッチ棒さん!」

 その時、ランキング1位の先輩がコメントを投稿した。

 「おい、お前誰だよ?俺から1位の座を奪おうってのか?お前にその実力があるのか、試させてもらうぜ」

 森岡翔は返信するのも面倒だった。

 彼は、最も高価なスーパードリームロケットを選んだ。

 発射…

 (小さなマッチ棒が、配信者小さな団子にスーパードリームロケットを1個贈りました)

 森岡翔はコメントを投稿した。

 「どうする?」

 (先輩が、配信者小さな団子にスーパードリームロケットを1個贈りました)

 (小さなマッチ棒が、配信者小さな団子にスーパードリームロケットを2個贈りました)

 (小さなマッチ棒が、配信者小さな団子にスーパードリームロケットを3個贈りました)

 …

 (小さなマッチ棒が、配信者小さな団子にスーパードリームロケットを66個贈りました)

 スーパードリームロケットは一つ4万円、66個で200万円以上になる。先輩は10個ほど贈った後、それ以上は諦めた。

 ライブ配信ルームの人気は急上昇し始めた。66個のスーパードリームロケットを贈ると、全チャンネルに広告が配信されるからだ。

 画面にはコメントが溢れかえっていた。

 「マジかよ、大金持ちだ!」

 「この小さなマッチ棒、なんか見覚えがあるような…」

 「ティックトックの超大金持ちだよ!昨夜、ある配信者に1時間で5200万円も貢いだ人だ!」

 「マジかよ?」

 「間違いない、まさかここに来るとは…さすが大金持ち、いきなり66個のスーパードリームロケットだぜ」

 「そんなすごいのか?初めて聞いたぞ!」

 「最近出てきた大金持ちらしい。いつもは、無名の配信者に貢いでるみたいだ」

 「なるほど!!!」

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